今年のアカデミー長編ドキュメンタリー賞の受賞作です。有楽町のビッグカメラのビルの8階の角川映画で観ました。
原題は「Searching for Sugar Man」です。Sugarにはヘロイン、モルヒネ等の粉状の麻薬という意味があります。シュガーマンは麻薬の売人という意味です。ロドリゲスのアルバム「Cold Fact」に収められた一曲めの歌の題名で、このドキュメンタリー映画の冒頭で流れ出てきます。
後半の感動場面では滂沱の涙が止まりませんでした。先週の王様のブランチでこの映画を紹介したリリコの目もうるうるしていましたが、まごうことなき感動作でした。
デトロイトの天才シンガーソングライター、ロドリゲスの奇跡のような人生の旅路を綴ったドキュメンタリーです。私もそうでしたが、観る者の魂を激しく揺さぶる珠玉の映画でした。個人的な感想ですが、この感動は奇しくも南アフリカが舞台となったラグビー映画「インビクタス」以来のことでした。 スクリーン上の観客の興奮・感動が映画館で観ている者にもヴィヴィッドに伝播してくるのです。もう感動して泣くしかありません。
1960年代後期に、ボブ・ディランと比較されるほど将来を渇望されていたロドリゲスでしたが、発売に踏み切った二枚のアルバム(Cold Fact、Coming from Reality)は全然売れず、彼はその後音楽界から姿を消してしまいました。その数年後、ロドリゲスの音楽は突然南アフリカで大反響を呼びました。アパルトヘイト等抑圧された社会に反発する若者の琴線にロドリゲスのストレートな詩と哀愁を帯びたリズムが触れたのです。彼の歌はたちまち反国家的な気持ちを代弁する象徴的なものにまで高まりました。アメリカで売れなかった彼のアルバムは南アフリカで爆発的な売り上げを記録しました。
ところが、アルバムの写真以外だれもロドリゲスのことを知りません。南アフリカの熱狂的なファン二人が、すでに死亡されていたと言われていたロドリゲスのたどった運命を探るべく調査を始めます。そして、彼らは驚くべき真実に行き着くのです。ここから先は、映画を観てください。感動してください。泣いてください。いい映画です。