有楽町マリオン9階の丸の内ピカデリーで観ました。
ベン・アフレックが主演・監督の作品です。ジョージ・クルーニは出演していませんが、制作に携わっています。というか、この作品の制作権はジョージ・クルーニーが持っていて、ベン・アフレックが監督を願い出たとのことです。その頃ジョージ・クルーニーは、「スーパー・チューズデイ」というテンポのいい大統領選挙に纏わる秀作の映画の制作中でした。(ジョージ・クルーニーの才能を感じさせる秀逸の作品だと思っています。) クリント・イーストウッドとは一味違ったテイストの映画を、こうした若手・中堅どころの現役スターが作ってくれるのは嬉しいことです。
ベン・アフレックは親友マット・ディモンと共同で脚本を手がけた「グッド・ウィル・ハンティング(1997)」で早くもその多才ぶりを発揮していました。
最近の「そんな彼ならすてちゃえば」「カンパニーメン」の役者ぶりもよかったけど、この「アルゴ」の中でのCIAの人質救出のエキスパート役は最高にいい。地味で、雄弁でも強引でもなく、人間らしいところが特にいい。スーパー・ヒーローぶったところはなく、ひたすら人質に自分を信じてほしいと懇願するところも好感がもてます。 シブイけど地味なんです。
結局、彼は人質を含めた周りの人に助けられて、人質6人を映画作りを模倣した映画撮影のスタッフに仕立て上げ、革命の嵐吹きすさぶイランからの脱出計画を成功させます。
イラン革命で革命側が米国に亡命した前国王パーレビの引き渡しを要求して、在米国大使館の館員を人質にとった実際の事件を題材にしています。そして驚いたことに、偽の映画作りをカモフラージュとして人質救出したことも実話なのです。
まるで映画のような実話を映画にした着想も面白いですが、沈着なベン・アフレックのCIAエキスパートの地味さに反して、脱出計画は、分刻みでかろうじてピンチから抜け出すという事件の連続で、空港から飛行機が離陸する瞬間まで、ハラハラドキドキさせてくれます。 ベン・アフレック演じるトニー・メンデスが事態を把握もコントロールもできていなく、その場その場で周りの人の機転や協力によって危機を切り抜けていく様に引きつけられます。
このイランのテヘランで1979年に起きた米国大使館人質事件の背景に、英米の石油資本とイラン民族主義の石油資源を巡っての資源開発者と資源保有者としての利権争いがあったことは、最近読んだ出光佐三をモデルとした「海賊とよばれた男」で知っていましたので、よけい興味深くこの作品を見ることができました。
監督賞・主演賞で来年のオスカーにWノミネートの噂のあるベン・アフレックです。
映画好きの人にはたまらない作品だと思います。 うまく表現できませんが、「シネマ・イン・パラダイス」の好きな人にはわかってもらえるような気がします。映画好きのすべての人にお勧めの作品です。ベン・アフレックの雄弁な無言にも是非注目をしてください。魅せられます。いや~、映画って本当にいいですねぇ。