野球を愛したルーズヴェルト大統領の言葉「一番おもしろい試合は8対7だ。」がこの本の題名になっています。奇跡の逆転劇という意味合いもこめられています。
廃部寸前の中小企業の社会人野球チームとその母体の会社存亡の危機に見舞われた中小企業はそれぞれの危機をしのいで奇跡の逆転劇を見せられるのか・・・相変わらずうまい筆さばきでわくわくさせてくれます。
「下町ロケット」での手法と同じですが、銀行や大手企業に無理難題を強いられながらも、技術力という伝家の宝刀で次々に襲ってくるピンチをしのいでしのいで最後に逆転ホームランを放つというおきまりパターンです。おきまりとわかっていながら面白いです。今回はその中小企業と運命共同体の社会人野球チームの物語が並行して語られます。この野球チームには社員の夢がいっぱい詰まっていました。
細川というコンサルタント会社出身の新参社長が何故古参の笹井という経理畑の取締役を差し置いて社長に抜擢された疑問に対して青島製作所の創業者会長が答えます。「それは客観的に評価できる力だ。比較するものを持っている人間が見て初めて、会社のどこが優れているかがわかるんだ。」
企業経営についても面白いたとえ話がありました。「経営というのはどんどんと種明かしされていく推理小説のようなものだ。どんな結末が待ち構えているかそれを推理しながら経営戦略を立てることに意味があるのであってネタが割れてしまった後に立てる戦略にはなんの価値もない。そのときにはすでに手遅れになっている。」