「摩天楼を夢見て」には米国不動産ビジネスの熾烈さと過酷さが描かれていました。
場面のほとんどが不動産屋の狭いオフィスなのですが、そこには汗臭い男の戦場が描かれていました。
古株のセールスマン扮する名優ジャック・レモンがプライドをかなぐり捨てて成績を上げようとする執念には鬼気迫るものがありました。そして実はジャックレモンを大先輩と敬う売上成績トップのアル・パチーノのセールス・テクニックの凄さにも恐れ入りました。一言で言えば売ろうとしないのです。言葉で言えば簡単なのですが、売ろうとせずに顧客が自分の意志で買おうと焦る状況を作るテクニックが見れます。
他の会社への」転職を虎視眈々と狙っているエド・ハリスに、大先輩セールスマンに囲まれた本店からその不動産屋の管理を任されたエリートケビン・スペイシーの演技もよかったです。
不手際をなじるジャック・レモンのふとした科白からその矛盾を突き、逆にある事件の自白に追い込むケビン・スペイシーの理詰め尋問のシーンは迫力満点でした。攻守逆転の鮮やかな印象が残ります。
お金はかかっていませんが名優の演技と米国のセールスマンのまさに生き馬の目を射抜く弱肉強食の世界を堪能できる1992年の作品です。