「小暮写真館」という小説の中で、小暮さんという亡くなった方のことをある人が回想するシーンがありました。
「小暮さんは消防隊員だったし、空襲でいよいよ危なくなるまで必死で駆けずり回って焼夷弾の火を消してみんなを逃がして防空壕に入らなかったから逆に助かった。」
防空壕に逃れた人々のほうが皮肉にも全滅の憂き目に合ったようです。
「人生、生きるか死ぬかの最後のとこは、てめえじゃどうにもならねえ。運しだいだって。」
似たようなエピソードが「夜と霧」にも載っていました。「人間が下す決断など、とりわけ生死にかかわる決定などどんなに信頼のおけないものかを知ったのはそれから数週間もたってからだった。」
彼は救助トラックに乗りそびれたのですが、トラックの荷台で自由への道をひた走っているはずの仲間は火達磨になって全滅したと伝えられたそうです。
自分の力ではどうしょうもないことを総称して「運」というのでしょうか?
「小暮写真館」はもうひとつ意味深長な言葉を残してくれました。
「人生でもっとも大切でもっとも難しいのは”待つ”ということだ。」・・・じっと運に身をゆだねるいう意味にとりました。
本日のNHKBSの週間ブックレビューにこの宮部みゆきさんの「小暮写真館」が取り上げられる予定です。宮部みゆきさんのインタビューが楽しみです。もう読んじゃったのが、残念ではありますが・・・余韻を楽しめそうです。