坂の上の雲の3巻で、山本権兵衛が何故東郷平八郎を何故連合艦隊の司令長官に選んだかということが書かれていました。
山本権兵衛は、つづけた。 「そこへゆくと、東郷という男にはそういう不安はいささかもない。大本営があたえるそのつどそのつどの方針に忠実であろうし、それに臨機応変の処置もとれる。戦国時代の国持ちの英雄豪傑というならお前の方がはるかに適任だろうが、近代国家の軍隊の総指揮官はそうはいかない。東郷をえらんだのはそういうことだ。」
「ちなみに、すぐれた戦略戦術というものはいわば算術程度のもので、素人が十分に理解できるような簡明さをもっている。逆にいえば玄人だけに理解できるような哲学じみた晦渋な戦略戦術はまれにしか存在しないし、まれに存在しえても、それは敗北側のそれでしかない。 たとえていえば、太平洋戦争を指導した日本陸軍の首脳部の戦略戦術思想がそれであろう。」
8巻に彼の冷静ぶりが紹介されています。
東郷は、「海戦というものは敵にあたえている被害がわからない。味方の被害ばかりわかるからいつも自分のほうが負けているような感じをうける。敵は味方以上に辛がっているのだ。」というかれの経験からきた教訓を兵員にいたるまで徹底させていた。